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【海外事例】大学の新校舎建設に見るランドスケープアーキテクチャーの設計プロセス

オーバーン大学モンゴメリー校の約30年ぶりとなる新校舎、スチューデントウェルネスセンターが完成しました。このプロジェクトには、Stephen Schrader氏とHolcombe Norton Partnersの共同制作となるランドスケープアーキテクチャーの仕事が大きく関わっています。

この記事では、40,000立方ヤードの大規模な切土・盛土を含むこのプロジェクトの設計プロセスについて紹介します。

1.土を動かす

プロジェクトの最初の仕事は、ウェルネスビルの建設用地を高くし、道路との関係を改善するために、40,000立方ヤードを盛り土して建設用地を準備することでした。このプロジェクトはLEEDの認証取得を目指していたため、同社は持続可能な土壌管理戦略として、プロジェクト敷地内の近隣地域の土を使用することを決定しました。

40,000立方ヤードの盛土は相当な量となるため、敷地外から材料を運んでくる代わりに、掘削によって生じたスペースを利用することで、使用可能な学内プレイフィールドを作りました。

   LEED認証とは・・・人や環境について考慮した建物(グリーンビルディング)を評価する国際認証制度のこと。

この単純なモデリングでは、水を北に確実に流出させるため、南側に1.25%の傾斜を設けています。

地形モデルの作成後、現況と計画の両方の等高線を表示するために、2D表示のパラメータを設定しました。

彼らは切土/盛土の計算を通して、40,000立方ヤードの土を使う目標を立てていましたが、この目標をより多くの情報に基づき実現することができ、建築家の目標に合致すると同時に、この施設の屋外レクリエーションの目標に貢献する陸上競技場の必要性を促進することができました。

地形モデルは勾配分析を行うことができるため、 Schrader氏は4つの勾配レベルを設定しました。これらのレベルは、勾配の範囲が設定で選択したものと一致する部分を色で表します。緑は2%未満の勾配を示し、赤に近いほど2:1の勾配に近づいていることを意味します。赤は2:1を超える勾配を示し、安定させるための修正が必要であることを示します。この方法は、不安定になる可能性のある急斜面を、個々の規模でもマスタープラン規模でもチェックするのに役立ちます。

下の画像は、新しいウェルネスビル建設までの掘削中の現場写真です。

2.LEED認証の取得

プロジェクト全体がLEEDの認定を求めていたため、現場の設計と実施から得られるクレジット(要求項目)は、Holcombe Norton Partnersに委ねられていました。同社が追求するLEEDクレジットの中で最も一般的なもののひとつが、計算されたベースラインからの飲料水使用量の削減です。

同社は、植栽オブジェクト、ランドスケープエリア、舗床、および他のオブジェクトに追加されたレコードから、植栽面積、表面積、水使用量の情報を含んだワークシートをVectorworksで作成しました。彼らは、設置サイズから散水の必要性まで、すべてのデータが標準化された植物テンプレートファイルを持っています。

  LEED認証システムは、プロジェクトが認証を取るために必要だと考えられる要求項目を総合した形で出来ています。
プロジェクトチームが取得を目標とする認証システムを決めると、デザインや運営の種類の決定に適当な要求項目(クレジット)を取捨選択してプロジェクトを推進することができます。

このような信頼に値する情報はどこで得られるのかというと、多くの場合、在来植物について必要な情報がすべて記載された第三者機関の資料から得ることができます。Holcombe Norton Partnersは、アラバマ州の農業協同組合普及サービス(Cooperative Extension Service)を活用しています。同サービスでは、在来および外来植物の品種とその水需要に関するデータをまとめており、信頼できる情報を提供しています。

この方法は自動化されており、オフィスの他のメンバーのワークフローを変えることなく拡張が可能です。プロジェクトチームのメンバーは、植栽計画を描き、ワークシートを開くだけで、LEED認証に向けた進捗状況を評価できます。

3.Vectorworksが可能にする、よりスマートなワークフロー

Vectorworks Landmarkのツールにより、Holcombe Norton Partnersは信頼性の高い計画を作成することができ、同時にLEEDクレジット取得のための詳細なドキュメントを提供することができました。

Schrader氏は、Vectorworks Landmarkの2つの主要な側面–––ワークシートとパラメトリックオブジェクトが、彼と彼の事務所に何度も役立っていると指摘します。この2つの組み合わせは、図面やモデルがプロジェクトの情報データベースとして機能することを意味し、重要な計算を実行するために使用することができます。

「デフォルトのオブジェクトが必要なデータを持っていない場合は、オブジェクトに情報を追加してください。駐車スペース、舗床、植栽などのパラメトリックオブジェクトは、図面を描く時間を節約し、面倒な数の拾い出しや計算を省くことができます」とSchrader氏は語ります。

元記事:Planet Vectorworks