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【海外事例】終末論のような傑作|MUSEの「Will Of The People」ツアー

世界的に有名なロックバンドMUSEは、「Will Of The People」ツアーで、Jesse Lee Stout氏、Sooner Routhier氏、Matt Geasey氏、Bryan Seigel氏とともに、ある物語を表現しました。

「Will Of The People」ツアーのための物語がどのように生まれ、そのストーリーテリングにVectorworks Spotlight がどう活用されたのかをご紹介します。

分野に関係なく、デザイナーとクライアントの関係は特別なものです。そのクライアントが別のアーティストであれば、関係はさらに深まります。美学や現実的な考慮事項は後回しになり、図らずも、ただデザインするだけではなく、ストーリー(物語)を語ることになるのです。

MUSEは、「Will Of The People」ツアーの物語に命を吹き込むために、Jesse Lee Stout氏、Sooner Routhier氏、Matt Geasey氏、そしてBryan Seigel氏に協力を求めました。

1.「Will Of The People」を世の中に届ける

19歳の頃からMetaformという名前で創作活動を続け、Red Hot Chili Peppers、Beck、Phish、などとコラボレーションをしてきたStout氏は、以前MUSEと仕事をしたことがあり、グループの独創的な力強さはまぎれもなく確かであり、素晴らしいライブショーにする必要があることもわかっていました。

Metaformのデザイナーは、アルバム「Will Of The People」のレコーディング段階からバンドと最新のツアーについて話し合っていました。MUSEが新しい音楽を創る時、どこからその発想や音がやってくるのかを明らかにするために、彼らの音楽や文化、政治などをテーマにMUSEのメンバーと話し合いました。

Stout氏は「バンドと私は、このライブツアーに独自のアイデンティティを与えるために、以前のツアーとはまったく異なる方向に進みたかったのです。そこで、私たちの『新しい日常』の比喩として、終末後らしい近未来の世界を表現しました。過去数年間でパンデミックが大混乱を引き起こし、政治的な暴動によってアメリカ合衆国議事堂が襲撃され、匿名のハッカーや活動家が政府や企業を攻撃し、人々が世界中で記念碑を破壊し始めました。私たちは皆、すぐにマスクを着用することに慣れ、自警団のグループが世界をリセットするという物語を提案しました」と語りました。

アルバム制作の途中から、Stout氏は受賞歴のあるデザイナーSooner Routhier氏に照明と演出デザインの協力を求めました。Routhier氏によれば「終末後らしい近未来世界の骨格のようなものを感じる」リグをデザインしたとのことです。

リグのデザインは、解体された建物の中にバンドを配置する照明のグリッドで構成され、無機質な外観を創り出し、混沌、無秩序、そして再建の兆しへと物語を展開させていきました。

Stout氏、Routhier氏とバンドがアイデアを出した照明と背景デザインの要素は、2022年秋のツアーでのビジュアルアイデンティティとなり、2023年のアリーナツアーまで引き継がれました。

最近のワールドツアーは、インスタグラムに投稿できる瞬間なしでは完結しません。

アルバムの主人公であるWillの巨大な頭が、鏡のマスクとフードを誇らしげに被り、出演者たちを見下ろしています。「誰かを見て、自分を振り返って自分自身が映るのを見るのは本当に恐ろしいことです。ショーのアイデンティティとして、この鏡から光を反射させたいとすぐに思いました」とStout氏は語りました。

ショーを見ている観客に対して、鏡のマスクは、彼らがWillになれること、そして、さらに重要なことは、彼らが世界に望む変化を映し出します。

2. Vectorworks Spotlightを活用したストーリーテリング

ツアーの明確なビジョンが確立されると、チームはVectorworks Spotlightをデザインツールとしてドラフトと設計を開始しました。

「リサーチを完了し、参考資料を収集して、アーティストやイベントの認可のための資料を作成し始めると、Vectorworksの3Dで実際の形状を試行し始めました」とRouthier氏は語ります。

Routhier氏の良きコラボレーターであるGeasy氏とSeigel氏は、プロジェクトの概念的な要素を導き出す協力をしました。Seigel氏によれば、Vectorworks Spotlightの最大の利点は、完全に構築された仮想リグで設計コンセプトがどの程度機能するのかシミュレーションできることだそうです。「3Dモデルができたら、あらゆる設計コンセプトを組み込んで、それが機能するかをすぐに評価し、どこを変更する必要があるのか判断することができます」と彼は語りました。

ドラフトチームは、Vectorworks Spotlightのサブディビジョンモデリングと概略図を大いに活用して、巨大なWillの頭やその他の空気注入式の形状、さらには一連のシーンを通じてライブショーの物語を展開していくために効果的なビデオスクリーンなどの背景要素を作成しました。

「すべての空気注入式の形状については、簡素化されたメッシュを取り込んでサブディビジョン図形に変換することが、パフォーマンスを損なうことなく複雑なオブジェクトの見栄えを良くする優れた方法であることがわかりました。そして、概略図は、8セットの照明バトンについて、設計の改訂が常に図面と同期していることを確認するための優れた方法でした。私たちは照明器具の2Dコンポーネントをカスタマイズできる機能を利用し、既存のラベル設定を概略図で使用できることを楽しみました」とSeigel氏は語りました。

データが豊富な専用ツールを使用することで、Stout氏、Routhier氏、Geasy氏、そしてSeigel氏のチーム全体が、最もやりたかった物語を伝えること、すなわちストーリーテリングに集中することができたということです。

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画像提供:Production design by Jesse Lee Stout and Sooner Rae
写真提供:Todd Moffses

元記事:Planet Vectorworks