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【海外事例】設計・施工の効率化=持続可能な成果|ALCHEMY ARCHITECTS

昨今、サステナブル建築において多くのイノベーションが起きている中、ミネソタ州セントポールに位置するAlchemy Architectsは、すべてのプロジェクトでサステナビリティを推進し、エネルギー効率の高い建築を感動的な方法で建設しています。

彼らが、BIMを活用して生み出した素晴らしいサステナブルプロジェクト「スコーム・レイク・ハウス(Squam Lake House)」についてご紹介します。

Alchemy Architects(以下、Alchemy)の特徴はweeHouseシステム(以下、weeHouse)です。weeHouseは、「全国のモジュラー工場を活用して300~3,000平方フィートの住宅を建設する、柔軟性のある事前設計されたモジュラーシステム」です。

Alchemyのプロジェクト、ニューハンプシャー州の「スコーム・レイク・ハウス」は、Vectorworksを使用して、weeHouseの哲学にインスピレーションを得たカスタムデザインです。この記事では、BIM(Building Information Modeling)がどのようにプロジェクトを成功に導き、Vectorworksのアルゴリズムデザインツールであるマリオネットが、ワークフローの効率化になぜ不可欠であったのか、さらに、パッシブハウスの原則を活用することで、コスト削減とともにサステナブルプロジェクトをいかに実現に導いたかについてご紹介します。

1. BIMは持続可能な開発目標を手の届くものにする

AlchemyはBIMを活用して、材料費や輸送条件などの情報が詰まった正確な3Dモデルを作成しました。

設計の初期段階でプロジェクトを3Dモデル化することで、彼らは建設時期よりかなり前の段階で、必要な材料を調達することが可能になりました。これによって輸送コストが削減されるため、プロジェクト全体の二酸化炭素排出レベルを低減することができます。

2. 影響を受けやすい遠隔地での仕事

従来の設計・施工の進め方は、現場が遠隔地にある場合、車両や建設機械はその影響を受けやすく、複雑な問題が発生することがあります。BIMの活用は、そのような状況を緩和する効果的な方法です。

Alchemyは、Vectorworks Architectを使って仮想建築を作成し、建設現場に足を踏み入れる前に、現場で起こりうる設計上の問題を整理することで、建設プロセスを予測できるようになりました。また、正確で詳細な形状により、自信を持って建築要素をプレハブ化できるため、現場での施工時間を短縮できます。

3. 自由な形状を生み出す自動化とアルゴリズムデザイン

「スコーム・レイク・ハウス」は、複雑な曲線の形状が特に際立っています。彼らは、基本的なコンセプトモデルから開始し、ビジュアルスクリプトを使用して流動的な独特の形状を実現しました。また、Vectorworksで建設詳細をモデル化することもできました。下の画像はそのプロセスを示しています。

まずはじめに、基本的な円筒形を作成してから、最終的に望ましい形状に近づくように先を細くしていくと、「魔法が起きました!」Vectorworksのアルゴリズムデザインツールであるマリオネットを使い、あらかじめ用意されたノードでスクリプトを作成して実行すると、上の画像の左下の形状に変換されます。これは、スクリプトを使用しなければモデリングに何年もかかっていたであろう形状のひとつです。

マリオネットについて詳しく知りたい方はこちら、また、「スコーム・レイク・ハウス」も紹介されている関連動画:BIMソフトウエアのアルゴリズムデザイン(英語)もご覧いただけます。

4. パッシブハウスのためにBIMを使う

パッシブハウスは、自然の力を、暖房、冷房、換気などに最大限活用し、建築物のエネルギー効率を高めるように計画するプロセスであり、Alchemyがプロジェクトを計画する指針となります。

パッシブハウスは、材料の選択と施工方法の品質にも大きく関わります。パッシブハウス.comによると、この建築の基準は、平均的な新築と比較して75%のエネルギーの節約につながる可能性があります

しかしながら、パッシブハウスの設計は経済的に成り立たないと考える人もいます。確かに、太陽や自然気候、その他のパッシブハウスの手法を利用するには何かを引き換えにする可能性があります。ですが、通常そのコストは、プロジェクトの全体スケジュールと労力に関連します。

AlchemyにとってBIMは、それらのコストを軽減する手法です。マリオネットによるビジュアルスクリプトの使用も、従来のワークフローと比較すると多くの時間を節約しました。これにより、パッシブハウスを経済的に実行可能にするだけでなく、クライアントにも環境にも有益なものにしました。

  Alchemy Architectsは「スコーム・レイク・ハウス」をどのように設計したのか?
Geoffrey Warner氏(Alchemyのオーナー、FAIA:アメリカ建築家協会フェロー)と
Eric Winter氏(Alchemyの建築家、AIA:アメリカ建築家協会)が設計プロセスについて語っているプロジェクト動画(英語)は、下の画像をクリック するとご覧いただけます。


画像提供:Alchemy Architects

元記事:Planet Vectorworks