2020年の夏季オリンピックが開催されるにあたり、Vectorworksで設計された過去のオリンピックの式典についてご紹介します。
Vectorworksで設計された2016年夏季オリンピックの思い出
7月23日、2020年東京オリンピックが開幕しました。本来の開催から1年後の開幕となりましたが、期待感は最高潮に達しています。開会式は、光を操るプリズムのように、その期待感を美しいものに変えてくれます。一方、閉会式では、この1ヶ月間に行われた競技の素晴らしさを振り返ることができます。また、これらの式典は、開催都市を祝福する素晴らしい方法でもあります。設計を通じて文化を祝うことは、非常にワクワクすることです。
2020年の夏季オリンピックがいよいよ開催されるにあたり、2016年リオオリンピックの壮大な式典の設計を振り返る良い機会だと考えました。このプロジェクトの設計と課題の克服は、3Dデザインソフトの力を示す好例と言えるでしょう。
2016年オリンピック式典の設計
2016年リオデジャネイロオリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会は、この大規模なイベントに向けて、オリンピック・パラリンピックの開会式・閉会式の演出・芸術制作を担当する世界最高の企業を選ぶ国際コンペを開催しました。
最終的にP&G Cenografiaが、オリンピックの開会式で最も重要な舞台装置の制作を任されました。クリエイターたちが愛称で呼ぶ「Box City」です。そのため、彼らはVectorworksの機能に託しました。
P&Gは、Box Cityの細部の構築、システムや素材のプロトタイプの開発・制作、障害や不備のテストと確認、そして舞台装置製作に関わる技術的・操作上の対処法の提示を担当しました。また、リハーサルや式典でのBox Cityの運営も担当しました。
Box City
イギリスで数々の賞を受賞している空間演出家のEs Devlinと、プロダクションデザイナー兼空間演出家のDaniela Thomasが考案した「Box City」は、シンプルであると同時に挑戦的なアイデアでした。その名の通り、街を模したいくつかの箱で構成された風景は、ダンサーが登って振り付けを行うマルチレベルのステージとして機能します。
ダンサー、アーティスト、専門家を循環させる箱の内部構造は、ボックストラスと構造フレームで構成され、印刷されたビニールキャンバス製の交換可能な「スキン」で覆われていました。
しかし、「Box City」にはいくつかの課題がありました。箱の上でパフォーマーたちが飛び跳ねたり踊ったりしても大丈夫なように、箱の構造を頑丈にする必要がありました。また、スキンを交換するための仕組みも必要でした。そして、73個の箱で形成されたモザイクを、スタジアムの観客が光学的に歪みなく見られるようにしなければなりませんでした。それに加えて、世界中の何十億人もの視聴者に向けて生中継されるイベントを企画するという、そもそもの緊張感もありました。
工事の全工程は、経験豊富なコンストラクション・マネージャーであるJulio Gomesの指揮・監督のもと、P&Gのワークショップで行われました。
「これは大変な作業でした」とGomesは述懐します。「建築家やデザイナーのチームからVectorworksファイルで約300枚の技術的な図面や詳細情報が送られてきましたが、それらをすぐに分析し、印刷してワークショップの各部門に配布しました。大工、機械工、塗装工、電気工、カバーリングの専門家など、約300人の作業員が技術的な図面を現実のものにしたのです」
Vectorworks – 設計とオリンピックの祝典をつなぐ3Dインターフェイス
以上のことを考えると、構造物の製造と組み立てを実行するには、綿密な計画が必要となります。それを実行するには、迅速なモデリングと詳細なドキュメント作成機能を備えた3Dデザインソフトウェアが最適です。そこでVectorworksの登場です。P&G CenografiaがVectorworksを使い始めたのは、まだMiniCadと呼ばれていた1996年のことでした。デザイナー兼クリエイティブディレクターのPaulo Neves氏は、「Vectorworksのおかげで、プロジェクトのイラストを描くだけでなく、技術的な図面をより直感的に作成できるようになりました」「Vectorworksは、簡単なベクタードローイング手法と同じように、精確な図面を作成することができ、私たちを魅了しました」と説明します。
舞台設計の経験が豊富なAltamir JúniorとOmar Muroは、Vectorworksを使ってBox Cityの組み立てをコーディネートしました。 Muroによると、大量の作業とタイトなスケジュールの中では、ソフトウェアの短い学習曲線が不可欠だったようです。これまでVectorworksを使ったことのない研修生や建築家は、すぐに習得することができました。「1週間も経たないうちに、彼らはすでにVectorworksで図面やディテールを描いていました」と Muroは説明します。
Júniorは、最初の検討から最終的な納品まで、組立工程のすべてをサポートしました。「Box Cityでの最大の課題のひとつは、芸術的なコンセプトに基づいた設計と現実の製造を組み合わせることでした」「プログラムを変更することなく3Dモデルを作成し、詳細な技術図面を入手できるという利便性と生産性は、必要不可欠な要素でした。Box Cityの場合、プロジェクトの複雑さと、スタジアムという建築物と背景要素との兼ね合いのため、2D/3Dの完璧な統合なしには作業ができませんでした」とJúniorは説明します。
元記事:https://blog.vectorworks.net/2016-olympic-retrospective-2020-tokyo