Vectorworksは新しいバージョンのリリースのために、Architect、Landmark、Spotlightの各プロダクトのイメージ画像を世界中から選出します。
Vectorworks Landmark 2021のシグネチャーイメージには、株式会社プレイスメディアが手がけたランドスケープデザインが、はじめて日本から起用されました。
今回は、世界に向けて発信された裕沁庭デザインの記事をご紹介します。
1990年以来、日本のランドスケープデザイン事務所であるプレイスメディアは、重要なイデオロギーを維持してきました。 ランドスケープアーキテクトは専門家でありながら、成功したデザインを提供するためには、プロジェクトのすべての関係者の視点を取り入れなければならないということです。
このようなコラボレーションの精神を示すプロジェクトの一つが、中国の太倉市にある「裕沁庭」です。豪華な住宅開発であるこのマスタープロジェクトでは、同じように豪華なランドスケープなしでは完成しません。建築を担当する坂倉建築研究所が、マンションの間の敷地計画を考案するため、プレイスメディアを招集しました。
太倉裕沁庭
太倉裕沁庭は、裕沁庭マンションの高層ビルの間の緑地に位置し、居住者のための美しい屋外空間、歩行者のための十分な通路、地下駐車場の覆いに最適な場所となっています。
緑地を大切にする持続可能なコミュニティのために設計されたPLACEMEDIAのデザインは、近くの長江デルタを反映した「緑島」のコンセプトに基づいています。これらのわずかに高くなった「島」は、それぞれ隣接する低地の豊かな緑に囲まれています。庭園の小さな島々は、葉脈のような錯覚を作り出す一連の小道によって接続されており、庭園の各「島」と集合住宅の各建物を接続しています。
樹木や低木が成長し花を咲かせることで、日陰や屋外の風景、そして地域社会にきれいな空気を提供します。太倉裕沁庭は、未来を見据えた緑の空間です。景観が将来に渡り繁栄できるように、回復力と持続可能性を追求して設計され、実施されています。
コラボレーションワークフローの確立
多くのランドスケーププロジェクトの特徴は、敷地内の建築要素に関する建築家とのコラボレーションです。プレイスメディアは、坂倉建築研究所と緊密に連携して太倉裕沁庭の全体計画を進め、景観と建物の調和を確保しました。
しかし、どのようなプロジェクトにも障害はつきもので、プレイスメディアにとっての障害の一つが海外での制約でした。「国内で調達できる材料でも海外では手に入らないものが多く、現地の状況に合わせて材料の選定や仕様を見直す必要があり、細かな指示が必要です」とプレイスメディアのassociateである小林祐太氏は言います。
「特に植物については、現地の天候や気候の違い、植栽や生産技術の違いがあるため、中国の植栽地に何度も足を運んで植物を選び、現地の植木屋さんとコミュニケーションをとり、時には樹種の変更を決断しました」と話します。
プレイスメディアにとって、敷地をイメージすることは2Dだけのプロセスではありません。実際、3Dモデリングを使用することで、空間全体で制御された視線を視覚化し、スケール感を生み出すことができました。さらに、プレイスメディアはプロジェクトの関係者に自分たちのデザインを簡単に見せることができ、各「島」の形状から屋外の家具の外観や配置にいたるまで、すべてについて素早くフィードバックを得ることができました。
あなたにとって創造性とは何ですか?
Vectorworks2021の開発テーマである「複雑なものをシンプルにデザインする」という精神に則り、特集された各社に同じ質問をしてみました。あなたにとって創造性とは何ですか?
「創造性とは、まだこの世界に存在しないものを創造する能力だと思っています。それは、与えられた敷地や周辺の自然環境やそこに住む人々の生活サイクルに新しい価値を生み出す形態やプログラムをデザインすることです」と小林氏は語ります。「そのためには、様々な分野や業種の人々との関わりを大切にし、お互いの分野の知識を広げながら協力していきたいと思っています。」
「屋外空間に対する人々の考え方が大きく変わろうとしています。」と彼は続けます。「年々顕著になる異常気象が話題になっていますが、社会に大きな変化はありませんでした。しかし、世界中に蔓延するCOVID-19の影響で、私たちのライフスタイルや社会・環境に対する行動に変化を迫られています。」
「私たちランドスケープアーキテクトは、土地や地域、環境との関係性をどう改善していくかを真剣に考える転換期を迎えており、より良い社会を創っていくことが私たちの職業の使命であると感じています。」