今回はVectorworks Architectから出力されたIFCを用いて、アドバンスドナレッジ研究所のFlowDesignerとの連携をご紹介します。
建築における室内外環境の設計や評価は歴史があり、学問としても確立しております。
それゆえ、スピードを重視する昨今の設計風潮と、確からしさを重用視する研究部門とでは、対象に対するアプローチ等が異なり、結果として設計段階でお互いにフィードバックを得る様な設計手法は、敬遠されがちでした。
しかし、コンピューターシミュレーションの発達に伴い、設計段階での各種検討は時代の要望となり、必要不可欠なものとなりました。
BIMは3Dで建物を設計することで、あらゆることが同時進行的に進んでいきます。
今まで、設計とは切り離されて考えられがちであった「環境系シミュレーション」も、設計の早い段階から取り組むことが可能です。
そこで、今回は”設計者をターゲット”とした開発を行い、CFDソフトとしても定評のある、アドバンスドナレッジ研究所の「FlowDesigner」との連携をお伝えします。
□アドバンスドナレッジ研究所に聞く
アドバンスドナレッジ研究所 代表取締役 池島氏、開発グループ 黒岩氏にインタビューを行なってきました。
気流解析ソフト「FlowDesigner」の概要と、ソフト開発の経緯、VectorworksのIFC取込みに関してお話頂きました。
上から アドバンスドナレッジ研究所 池島氏、黒岩氏、A&A竹口
竹口:
「FlowDesigner」はCFD(気流解析)ソフトですが、その特徴をお聞かせ下さい。
池島:
「FlowDesigner」を一言で答えると、「風の流れ」と「温度分布」を求めるソフトです。CFDソフトが数ある中、2003年にリリースしましたが、恐らくこの業界では最後発ではないかと思います。
竹口:
比較的最近のリリースですね。
池島:
はい、そもそも私は総合電機メーカーの研究所にて、設計者向けのCFDを開発していたのですが、開発サイドやソフトウェア会社が「簡単です」と言っているソフトでも、設計者は日々忙しく、なかなか使ってもらえず、大きな挫折を覚えました。
その後、現在のアドバンスドナレッジを立ち上げる際、本当に設計者が使えるCFDが世の中に無いと思い、開発を始めたのが、現在の「FlowDesigner」です。
私は、前職の中で海外のソフトを含め様々な市販のCFDソフトを使ったり、設計の方に勧めたりしてきたのですが、逆に実務でのCFD活用の限界を感じるようになってきました。どうしたら設計者の方が、実務でつかってもらえるようになるだろうかと考えた結果を反映し、開発を行なった経緯もあり「FlowDesigner」はユーザー側が作ったソフトと言えます。
竹口:
確かにCFDは難しく、専門家のツールのイメージがあります。
池島:
今までのCFDは、研究者の使用を前提としていたので、設計者が使おうと思うと難しく、何度も挫折するような場面を目の当たりにしてきました。
なので、もっと”違うツール”がないと普及しないと思いました。
竹口:
「設計者が使えるソフト」を作ろうと考えたのはいつ頃からですか。
池島:
20年も前から、設計者向けソフトの構想はありました。ただ当時はインターフェース等思うようなものが作れず、本格的に作り出したのが2002年頃です。
竹口:
他社製品との一番の違いは何ですか。
池島:
開発の思想は、「どれだけ設計の現場で活用されるか」です。この考えに共感頂き、設計部署に導入頂いていること、これが違いでしょうか。
竹口:
研究所(研究部門)ではなく、あくまでも、設計部門ですね。
池島:
はい。ただし、内部的には精度の高い計算プログラムを持っています。それを理解して頂き、研究所等での活用も増えています。